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Jun 03, 2011

「HOME 空から見た地球(ロングバージョン)」ヤン・アルトゥス=ベルトラン監督

背筋が凍るほど美しくそして恐ろしい、地球の過去と今と少し未来の物語。

映画公式サイトはこちら
2009年の映画ですが、
劇場公開版に30分の未収録映像を追加したロングバージョンです。

先週末の無理が祟ったか今週は週明けからよれよれ。
今朝家事を一通り済ませてスカパーの番組表眺めてて見つけました。
一向に収束しない原発、くだらない政局争いにげんなりで
空から撮影したきれいな景色を見たら気分も晴れるだろうなーーって。

冒頭は空から撮影した地球の絶景オンパレード

「素敵~きれい~凄い~★゜・。。・゜゜・。。・゜(*゚▽゚*)゜・。。・゜゜・。。・゜。」

な気分で観てました。

開始30分後までは。

映像は人類の歴史と共に地球の自然がどう変化して行ったかを
名優グレン・クローズ(「危険な情事」)の淡々としたナレーションで
進んでいくのだけど、観ているうちに段々背筋に寒いものが走り出す。

人の手だけで行われてきた農業はいつしか機械を使う農工業となり
広大な台地での生産に石油を使う機械と水が惜しみなく消費される。
そうやって生産された穀物は人の口ではなく家畜の餌となり
主に都市部で大量消費されていく。
酪農も広大な牧場に家畜を押し込め緑の草でなく
大量生産された穀物を口にしこれまた食用肉として都市部へ。
都市部は世界中の石油や水といったエネルギーを吸い上げながら
膨張しまたその維持のためにエネルギーを吸い込んでいく。
その1つがドバイ、
「エネルギーを使い都市を築く、なのにソーラーパネルは一つもない。
富裕国をなぞるだけの国は自然に最も近いのに遠い」
監督の人工都市への痛烈な批判。
都市部に住む世界のわずか2割の人間が8割のエネルギーを消費することで
資源国の格差を助長し国土からエネルギーを奪い続けるのだ。
ヨルダン川の水位低下から死海には汐の海が出現し
キリマンジャロやヒマラヤ山脈はその景観を変えていく。
増えていくばかりのCO2は旱魃を生み山火事が又CO2を増やし海面が上がっていく。

だけど破滅へ向かうばかりでないことも監督は提示しています。
軍備から自然保護へシフトした国や計画的な伐採による森林管理、
フェアトレードの必要性も訴える。
賢い消費者になり食べる分だけを収穫しよう。
エネルギーも自家発電や再生可能エネルギーの実例も紹介された。
そして最後に

「地面を掘るのをやめ空を見上げよう、太陽の恵みは無限だ。
今あるものを大切にしよう。人間には変わる力がある。」

と力強いメッセージ。
それはまるでパンドラの箱の底に残った希望のように私には思えました。

悪夢のような東日本大震災以後、
日本は原発を初めインフラの多くを見直さざるを得ない状況になりました。
遠い国の知らない大勢の人を犠牲にすることで成り立つエネルギー政策を手放し、
必要なものを必要なだけ生産する方向へシフトしていかねばなりません。
皆が今まで何をやってきたのか、これからどうすればいいのか、
この映画にはそのヒントになるかも。

ベルトラン監督は世界的航空写真家、
この映画は彼が撮った写真集「空から見た地球」をベースに構想15年、
ドゥニ・カロとリュック・ベンソンのプロデュースの元に実現しました。
変な演出もなく音楽と淡々としたナレーションでつなぐだけの映画ですが
食い入るように観てしまうのは強いメッセージがあるから。

YouTubeでも劇場公開版がありますが(^-^;音声英語のみで字幕なし。
http://www.youtube.com/watch?v=jqxENMKaeCU
でも大きなテレビがあるならこの美しいハイビジョン映像を
是非レンタルで観て欲しいですね。

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