キャンバスに渦巻く黒く赤い愛と死と官能。
国立西洋美術館で開催中のノルウェーの画家ムンク展に行ってきました。
公式サイトはこちら。
単なる回顧展とは違い彼が<生命のフリーズ>と名づけた作品と
講堂や劇場に飾られた作品が一堂に会する展示会です。
ムンクといえば誰もが「叫び」↓を頭に浮かべるでしょう(今回は展示なし)。
あまりにインパクトがあるこの絵のために
彼のイメージは「気持ち悪い」「不可解」になりがちでした。
病弱だった彼にとって死は身近なものだったのかこの絵に限らず、
初期作品の赤はまるで血のように紅く黒は吸い込まれそうな不気味さです。
けれどこの展覧会では彼が実に多彩な表情を持つ画家であったことを
私たちに知らしめてくれます。
では以下気になった絵を。
・吸血鬼

女性が男性に覆いかぶさって首筋に唇を当てている。
吸血鬼といえば男性のイメージがありますが、
この作品ではその役割が逆になっています。
男性にまとわり着くような女性の赤い髪はまるで血の流れのよう。
同じモチーフと題名で黒を基調にした絵もありました。
・声/夏の夜
光る川、命の煌きの柱、暗い林をバックに佇む女性は
当時ムンクが交際していた女性でしょう。
夜の青はどこかシャガールやゴッホの夜を描いた絵のようです。
・マドンナ

このムンク展、一番の目当てはこの絵でした。
長い黒髪を漂わせ恍惚の表情をする美しい女性は(たぶん)聖母マリア。
左下は彼女の胎内で息づく胎児(たぶんキリスト)でしょう。
周囲の枠を泳ぐ生き物は精子、かな。
そして背景の暗闇=死、女性と胎児=生、なのでしょう。
このモチーフと題名は同じものがいくつかありますが、
どれもどこかクリムトを思わせる美しいマドンナが描かれています。
・病める子供
ベッドから半身を起こしている少女と横でうつむく母親の絵。
少女は早世したムンクの姉でしょう。
鋭い線で描かれたこのどこか痛々しい絵は家族を失う悲しみに
満ちています。これも同じ題名、モチーフで他にもありました。
・公園で愛を交わす男女
ある医師に頼まれて室内用に描いた絵だそうですが、
「子供部屋にはふさわしくない」と医師につき返されて
彼の手に戻り後に一部書き加えられて世に出ました。
広い公園で幸せそうに時を過ごすカップルが数組
描かれています。明るい色彩はどこか印象派の画家の作品みたい。
・星月夜Ⅰ
一瞬ゴッホかと・・・^^;。いやほんとこれそっくりです。
ムンクもゴッホも精神を病み苦しんだ者同士、
絵が似るとは意外な共通点です。
・人間の山
パステルタッチで描かれた人間の山の上で光り輝くもの。
「一将功成りて万骨枯る」の言葉が頭に浮かびます。
この他にはスケッチなどもあって彼の製作過程が垣間見えました。
後世のシャープな線はどこか痛々しく感じるものの、
色彩は柔らかくなっていました。
彼の中で何かが変っていったのでしょう。
グッズは「声/夏の夜」と「マドンナ」の絵葉書を買いました。
「マドンナ」は別のバージョンがあるのでこれで2枚揃ったことになります^^。
混雑具合ですが、三連休の最終日開館30分前に着いたにも関わらず
閑散としていました(^^;。開館直後も人がぽつぽつ出拍子抜け、
10時以降はそれなりに人が途切れず入場していたけど
新美の「フェルメール展」の混み具合とは随分な違いです。
それもこれも一般的なイメージが「・・・」だからでしょうね^^;。
でもそんな気持ちの悪い絵ばっかりじゃないし(^^;、
一人の画家の変遷がよくわかる内容になっています。
ムンクに少しでも興味がある方にはお勧めします。
「ムンクついでに西美の常設展を」という方、
2009年3月まで新館の改修工事なので展示が見られません。
本館と前庭の彫刻のみが鑑賞可能です。
お気を付けください。