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Jul 27, 2007

画集「ベクシンスキー」

Beksinsuki_3

BPさんの究極映像研究所で紹介されていた
ポーランドの画家ベクシンスキーの画集「ベクシンスキー」
とてもおもしろそうだったので、
「男鹿和雄展」(レビューはこちら)のついでに
東京都現代美術館内の美術図書室にて閲覧してきました。
日本で唯一出版されたもので解説は永瀬唯さん。


以下この画家の説明と本の感想。
『 』内は永瀬唯さんの序文からの引用です。

ベクシンスキーはポーランド生まれの孤高の画家。
建築科で学んだ後は工事現場監督(本人によると”処刑場の奴隷監督”)として
働き、並行して写真、彫刻、絵画を学びました。
一貫して『ディスフィギュアド・ボディ(損壊される身体)』をモチーフとし、
多くの衝撃的で退廃とエロスに満ちた作品を数多く創作しました。
そして人嫌いで知られたこの画家は、刺殺体で発見されるという
その多くの作品と同じように衝撃的な最後を遂げました。

彼の絵には骸骨人間や不気味な生き物や建物が多く登場します。
女性が思わず嫌悪感を抱くような描写もあります。
絵の多くは暗くよどんだ色調のものなので、
人によってはかなりの拒否反応を示すでしょう。
けれど彼が生まれ育った国の過酷な歴史を思い浮かべれば
この画風も納得がいきます。

さてこの本ですがA4オールカラーで絵は57枚。意外に小さくちょっと拍子抜け。
4000円という値段は高く感じますが、
マイナーで一般受けしない作風を考えるとこの値段は仕方ないかもしれません。
といってももうオークションでしか手に入らなさそうです^^;。

冒頭の永瀬さんによる文ではベクシンスキーの生い立ちから
その創作の秘密について述べられています。
これがなかなかの読み応えで面白かった。
引用すると、

『ベクシンスキーの創作の秘密は、夢または、白昼の、心に浮かんだ心象風景の一瞬の記憶をボードの上に固定することにある。』

で、けれど夢の内容はすぐに忘れるため

『自己の内部のメモリーバンクから表出すべき感情と代替する要素部を引き出し空白を埋めていく』

だったそうです。このメモリーバンクという言い方に痺れます。

夢を形にする手法としてシュールレアリスムがありますが、
永瀬さんはベクスンスキーの創作がこれと出発点は同じとしながら、

『物語の過剰性、マニエリスム絵画に似た空白への嫌悪という点で、ベクシンスキーの方法論はシュールレアリスムとは根本から異なる。夢を形にするための、彼のメモリーバンクに含まれるものはギーガーら現代の絵描きたちではなくボッシュから始まり、ターナー、ベックリン、クリムトにいたるアレゴリーとシンボリズムの作家である。』

と述べておられます。
これは超意外でした・・・・・・・・・・。ギーガーと同系列じゃないんだ。
ボッシュはわかるけど。
ターナー、、、あ、あの黄色い色合いはターナーの絵に似てますね。確かに。
クリムトは・・・耽美な雰囲気と空白を絵の具で埋めてしまう点が同じか。
ベックリンはこの人?だとしたら雰囲気は似てる。

それではいかに印象に残った絵の感想をば。
尚作品番号はこの本の中のみのものです。
ポーランドのサイトにて画像があったものには
リンクを貼っておきますが、
怪奇でグロテスクな俗に言う一見気持ちの悪い絵がほとんどなので
人によっては気分が悪くなるかもしれません。
ですので、ご覧になる場合は自己責任にてお願い致します(^^;。

作品3:1974
石壁の上に座る青いマントの人物(顔は見えない)。
人物の前には書台があり、石壁の右上には吊るされた人物(顔を鳥に食べられている)。
壁には「IN HOC SIGNO VINCES」の文字(何の意味?)

作品5:1976
赤い林の前に骸骨の馬にまたがった骸骨に近い全裸の長髪の女。
その腹の前には真っ白な幼児を抱いている。上部には舞い散る赤い木の葉。
燃え盛る街に取り残された母子?

作品10:1978
女の髪で作ったような建物。内部の青が吸い込まれそうに美しい。

作品11:1978
作品10とよく似た絵。夜に染まる不思議な建物。幻想的な雰囲気。

作品12:1978
青い海に象形文字の砂浜。黄色い空には黒い三日月。
エジプトを思わせる絵。一番のお気に入り。

作品18:1984
抱き合う骸骨に近い全裸の男女?戦争の犠牲者か。

作品27:1980
巨大な顔の形をした建造物。

作品40:1985
海面のような海、重苦しい雲がたちこめている。

貸し出し不可なので本が手元にないのが残念ですが、
画集の3分の1を占めるのが骸骨のような人や建物の絵だったと
記憶してます。
私個人としてはモノトーンに赤や青を効かせた絵が気に入りました。
また画集のほうがサイトより発色がきれいな感じがしました。

この画集を閲覧した東京都現代美術館の図書室は
ちょっとおもしろいところです。
日テレ関係とあって宮崎駿監督の絵コンテ本や
アニメーション関係の図書もおいてあります。珍しいでしょ?
ただ残念ながらすべての図書が閲覧のみで貸し出しは不可能です。
行ったついでに利用するにはとてもよい場所でした^^。
ご興味のある方は一度行ってみてはいかがでしょうか。

関連リンク
BPさんの究極映像研究所のエントリ
ポーランド現代絵画孤高の巨人 ズジスワフ・ベクシンスキー:Zdzilsaw Beksinski
ズジスワフ・ベクシンスキー 画集 『ファンタスティック・アート・オブ・ベクシンスキー』Zdzilsaw Beksinski  "The Fantastic Art of Beksinski"

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Comments

 shamonさん、こんばんは。

 詳細レポート、ありがとうございます。
 特に永瀬唯氏の序文を紹介いただけたのが、とても嬉しいです。

>>けれど夢の内容はすぐに忘れるため
>>『自己の内部のメモリーバンクから表出すべき感情と代替する要素部を引き出し空白を埋めていく』

 この表現はしびれますね。
 ベクシンスキーの絵が夢で観た暗黒のシーンを思い出させるというのは、よくわかります。ある一枚の地下の風景の絵は、僕が観た夢のシーンと全く同じ印象。集合無意識を経由して、ポーランドの地の悪夢がこの地にも舞い降りたのかもしれません。

>>作品40:1985
>>海面のような海、重苦しい雲がたちこめている。

 この絵は僕も大好き。
 ポーランドの作家レムの『ソラリス』のイメージ画としてもピッタリかと。

>>ベックリンはこの人?だとしたら雰囲気は似てる。

 下のリンクでベックリンの絵はいくつか観られます。

http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLC,GGLC:1970-01,GGLC:ja&q=B%C3%B6cklin&oe=UTF-8&um=1&sa=N&tab=wi

 この絵↓なんて、なかなか幻想的でいいですね。
http://perso.orange.fr/mad.gabon/art/bocklin.htm

Posted by: BP | Jul 27, 2007 at 12:41 AM

まいどです。BPさん。

>詳細レポート、ありがとうございます。
こちらこそネタのご提供感謝です^^。
図書館とかであるのなら是非手にとってくださいね。

>集合無意識を経由して
むふふ、私も入ってるかも。

>ポーランドの作家レムの『ソラリス』のイメージ画としてもピッタリかと。

これ、ドンピシャですよね。
同国人ゆえのシンクロでしょう。

ベックリンは神話って雰囲気ですね。実物を是非観てみたいです^^。

Posted by: shamon(BPさんへ) | Jul 27, 2007 at 10:00 PM

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