「美の巨人たち」藤田嗣治特集
テレビ東京系で放映。公式サイトはこちら。
前後編になっており、前回(4/1)は藤田の生い立ちと画家としてのキャリア、今回(4/8)は大作「ライオンのいる構図」の謎について。
まず”世界を魅了した乳白色”のルーツについて。
これは日本の浮世絵を見習ったそうな。
彼は女性の肌を美しく描こうと試行錯誤、キャンバスの下地に石膏もしくは炭酸カルシウムを混ぜ美しい白が出るよう工夫した。その上からできるだけ絵の具を薄く塗って下地の色を生かすことであの乳白色が完成したと。
そして「ライオンのいる構図」。
実はこの絵、単品ではなく「犬のいる構図」と対の作品。番組内ではこの2枚を並べて説明していた。
獰猛なものが檻に入れられ綱につながれているこの二枚は「暴力が抑えられた愛のある世界」=「天国」を表している。
で、当然「天国」があれば「地獄」があるわけで、「争闘Ⅰ」と「争闘Ⅱ」というこれまた対になった「ライオン~」と同じサイズの絵が存在している(現在修復中)。
こちらは争う男達や獰猛な犬、おびえる女性達で「地獄」を表している。
藤田はこの4枚をバチカンのシスティーナ礼拝堂の壁画からインスピレーションを得たらしい。ミケランジェロの手によるこの壁画が彼の創作意欲をかきたて上記の4枚が完成したと。
日本に来ているのは「ライオンのいる構図」のみだけど、ぜひとも4枚とも並べて見てみたい、と思った。
ところで「ライオンのいる構図」には女性の美しい白い肌だけでなくちょっと黄色い肌の色の人物も描かれている。
その黄色がどこかシャンパンの色に似ていると思うのは私だけだろうか。
手持ちの「Esquire日本語版 2001/1月号」に藤田とシャンパンの深いかかわりが記されている。
この記事によるとランスのサン・レミ大寺院に感動した藤田はランスの大聖堂でカトリックに改宗しキリスト教徒となった。そしてフランスに帰化しレオナール・フジタとなった(以下フジタと記す)。
彼のこの一連の行動に協力したのは当時コルドン・マム社の社長だったラルー。
マム社は「君の瞳に乾杯」で有名な映画に使われたシャンパンのメーカー、芸術家と名作映画の意外な関係である。ラルーがフジタにシャンパンのボトルデザインを依頼したことから二人は無二の親友になっていたのだ。
フジタはランスに小さな礼拝堂(フジタ礼拝堂)を立てその中の壁画も全て手がけた。描かれたモチーフは聖書の逸話、広島・長崎の原爆、聖母マリアと幼子イエス、フジタと5番目の妻君代、ラルー、そしてシャルドネ、ピノ・ノワールにピノ・ムニエ。
そしてフジタは親友ラルーに「死んだらここに埋めてくれ」と頼んだという。
礼拝堂が完成した2年後にフジタは死去する。亡骸は礼拝堂に安置されるが君代夫人が彼の遺言を無視する。夫人は突如遺体を運び出し火葬後パリの自宅近くに埋葬してしまったのだ。
ラルーは裁判までするも敗訴。やがて彼も天に召された。
世界中で愛されるマム社のシャンパン。
その美しい乳白色で今なお世界を魅了しつづけるフジタの絵。
きらめくシャンパンの色は、フジタが夢見た天国の色だったのかな。そんな気がします。
参考文献:「Esquire日本語版2001/1月号 ワインに愛された奇才たち特集」
「神とシャンパンとシャンパーニュ」p70-p74より
Comments
こんにちは。
TBありがとうございました。
大変興味深く拝読させていただきました。
黄色とシャンパン。
黄色は確かにアクセントとして
藤田が好んで積極的に
用いている色だな~と
思っていまいたが、その黄色と
シャンパンとの関係!!
とても勉強になりました。
ありがとうございます。
次に藤田の作品を観る時は
その点に注意して観たいと思います。
Posted by: Tak | Apr 22, 2006 03:08 PM
Takさん、こんばんは^^。
TB&コメントありがとうございます。
こちらこそいつもTakさんのブログで勉強させていただいてます。
この「Esquire」はとても内容が充実しています。もし古本屋等で見かけられたら入手されることをオススメします。
藤田の他に充実した記事としては
・ロートレックとボルドーワイン
・ナポレオンとモエ・エ・シャンドン(ドンペリのメーカー)
・カミュとブルゴーニュ
についての記事(各々4pくらい)が掲載されています。
また
・パブロ・ピカソ「バッカナール」
・ラウル・デュフィ『美食「リング・アラウンド・ザ・ムーンのためのバケット』
・マン・レイ「ピクニック」
・クロード・モネ「草上の昼食」
・ジャン・デュバ「葡萄の木とワイン」
・アルベール・フーリエ「イボールでの結婚披露宴」
といった名画とワインの関係についての記事もあり(各々1p)。
お手元において損はないです^^。
Posted by: shamon | Apr 22, 2006 08:21 PM
こんばんわ。コメント有り難うございました。
シャンパンですかぁ~、やはり藤田はモダンですね!
お酒の飲めない私ですが、一度は飲んでみたいものです。
Posted by: がじゅまる | May 06, 2006 07:05 PM
いらっしゃいませ^^。
>藤田はモダンですね!
ですよね!
コルドン・マムはハーフボトルもあるので
一度試してみてくださいね。
おいしいシャンパンですよ。
Posted by: shamon(がじゅまるさんへ) | May 06, 2006 08:19 PM
この放送見ましたよ~(^_^)/
《ライオンの構図》をこの番組で知り、会場でのご対面をとても楽しみにしていました。そして、キャンバスの下地作りが放送では一番興味深かったと記憶しています。
秋の夜長にシャンパンを飲みながら図録を読み返そうと思います(^_^)v
Posted by: りゅう | Oct 04, 2006 12:03 AM
こんばんは~。TB&コメント感謝です。
いい特集でしたよね。録画しなかったのが(TT)。
>シャンパンを飲みながら図録を読み返そうと思います(^_^)v
例の名台詞もお忘れなく(^^)。
Posted by: shamon(りゅうさんへ) | Oct 04, 2006 07:47 PM
こんばんは。コメント&TBありがとうございました♪
こちらはブラウザが Firefox だったのが原因(?)で、TBが送れていなかったようです。
再度やってみましたので、よろしくお願いいたします☆
この番組のこともぜんぜん知りませんでした。
「きらめくシャンパンの色は、フジタが夢見た天国の色だったのかな」
shamon さんのコメントがステキ♪
フジタの見方がこれから変わりそうです。
ありがとうございました(*vv*)
Posted by: Manbou | May 10, 2007 10:15 PM
こんばんは^^。またのお越し感謝です^^。
TB無事到着してます。お手数おかけしてすみませんでした。
>shamon さんのコメントがステキ♪
ありがとうございます^^。
如何せん呑んべなので例えるのはいつもワイン(爆)。
ではこれからもよろしくお願いします~。
Posted by: shamon(Manbouさんへ) | May 10, 2007 10:22 PM
>如何せん呑んべなので
あぁ、それは私も・・・♪
それから、また勝手に追記で紹介させていただきました。
なんだか行ったり来たりさせちゃってますが(笑)、今後ともよろしくお願いします☆
Posted by: Manbou | May 10, 2007 10:55 PM
こんばんは!リンクありがとうございました。
>あぁ、それは私も・・・♪
ではそちら方面でもよろしくお願いします~^^。
Posted by: shamon(Manbouさんへ) | May 11, 2007 09:28 PM