時間調整に感動なし
「24時間テレビ28 愛は地球を救う」の放映日が近づいている。
今年のチャリティ・マラソン・ランナーは同局の人気番組で有名な丸山弁護士。最高齢のランナーにまた某匿名巨大掲示板が賑わうんだろうな。どんな理由があるのか殆どオープンにされないコースや、酷暑の中ランナーに排気ガスだらけの国道沿いを走らせる無神経さ、わざわざ時間調整して番組終了間際にスタジオに飛び込ませる演出など、ランナーの方には申し訳ないが私はいつもため息しか出ない。フィニッシュシーンのみ夫が毎年面白がって観ているけれど。
1994年頃までオーストラリアで「ウェストフィールドラン」というウルトラマラソンレースがあった。確か総距離1080Kmを8日間で走りぬく、その日その日のノルマ(1日当たり100km以上!)をこなさないとその時点でリタイアとなる過酷なレース。日本人で完走しているのは高石ともや氏だけ。昔、このマラソンのドキュメンタリーをテレビで見た。
過酷なレースだけあって参加者はわずか10名かそこら。その中に元強盗犯の男性がいた。彼は15歳で罪を犯し8年の服役を経て出所したばかり。迷惑をかけた家族に詫びるため、人生の再起をかけてこのレースにエントリーしていた。
何日間にも渡るこういったレースではサポーターをつけることが義務であることが多い。サポーターは数人のチームを組み、車に食事や水、医療用具を積んでランナーの走りを邪魔しないよう車で伴走する。彼には家族がそのサポーターを務めた。
彼は最初頑張って走っていた。けれど時間がたつにつれ百戦錬磨のセミプロランナーたちとの差はどんどん開いていく。元から体力と経験が違いすぎたのだ。それでも彼は歯を食いしばって必死に走っていた。
2日目だったか3日目だったか、彼の足は遂に一歩も前に出ることができなくなった。膝がやられて足の裏はつぶれたマメで血だらけ。体力も限界に達していた。満身創痍の彼に「もうやめてくれ。」と懇願する家族。それでも前に進もうとする彼だったが遂にリタイアした。
ホテルに運ばれた彼はバスタブの中で泣きじゃくった。ふがいない自分への怒りと悲しみが一気に爆発したのだろう。そんな彼を抱きしめて家族も一緒に泣いていた。ランナーにとってリタイアは辛い決断だ。一緒に観ていた市民ランナーの夫は自分を重ねるかのように泣いていた。彼がその後どうなったのかは知らない。だけど家族の愛情とこの経験を元にきっと更生できたと信じている。
マラソンに限らず何かに挑戦するきっかけは人それぞれ。重い事情もあれば軽い動機もある。そして結果にかかわらずその一つ一つにドラマがある。それをそっと掬い上げるだけでいいのではないか。チャリティランナーの方には申し訳ないが、たっぷりと休養を取った顔で元気一杯にフィニッシュラインに飛び込まれても観るほうは白けるだけ。感動に時間調整など必要ない。そろそろそれに気づいてもいいはず。でもできないんだろうな(・・)。
Comments
最近のやらせ番組には、イヤになりますよね。
演出された感動よりも、本物の感動が見たいと、誰もが思っているはず…。
Posted by: 酎犬八号 | Aug 08, 2005 11:49 PM
いらっしゃいませ、酎犬さん^^。いつもお世話になってます。
ウェストフィールドランのドキュメントは確か「新世界紀行」という番組でした。元強盗犯の彼のエピソードはその一部でしかなかったのですが、今も心に残っています。
>出された感動よりも、本物の感動が見たいと、誰もが思っているはず…。
多少の演出は場を盛り上げるけど度が過ぎるとしらけますよね。かんぺー氏以後ヤラセばかりでほんとにうんざりです。
昨年の杉田かおる氏がフィニッシュしたときは二人で
「たっぷり休んだって顔してるな~(・・)。」(爆)
てな具合に仲良くハモりました(爆)。
こちとらまっとうなマラソンレースのフィニッシャーたちを山ほど見てるんだ。
簡単に私たちを騙せると思わないでね(笑)>日テレ。
Posted by: shamon | Aug 09, 2005 01:06 AM