「蝶になった少女」
台風一過、には日がたちすぎたけれど今朝は真っ青な空が気持ちよかった。通り抜けていく涼しい風に、夏の花たちも一息ついているよう。
「その少女はハイビスカスの咲き乱れる中に立っていた。」
確かこんな文章だったかな。水木しげる氏のエッセイ「蝶になった少女」(中公文庫『怪感旅行』に収録)の一文。
「ゲゲゲの鬼太郎」で有名な氏だが、実はエッセイも多数お出しになっている。この本はどのエピソードもいいが、その中でも「蝶になった少女」はとりわけ心に残る作品だった。
太平洋戦争の頃、兵隊としてニューギニアに赴いた氏はある現地住民の少女と出会う。上官の目を盗んでハイビスカスが咲き乱れる森で過ごすうち、彼女へ恋心を抱く。けれどその想いは叶うことなく氏は復員する。そして長い月日がたったある夏の日、花屋の前を通りかかった氏は店先に並べられたハイビスカスの鉢にふと遠い日を思い出す。懐かしさに鉢を全て買い、家の軒先に並べ毎日水をやるようになった。やがてハイビスカスは色とりどりに咲き甘い香りを放ちだした。そしてその頃から不思議な現象が氏の前に現れる。ふと少女の消息が気になった氏は、何十年かぶりに彼女が住む村の村長へ手紙を送る。そして返ってきた返事は----。
氏の叶わなかった想いとニューギニアの言い伝えが切なくて、ラストの数行に涙が止まらなかった。この季節青い空に向かって咲くハイビスカスを見るたび、この話を思い出します。
« 蜩 | Main | 2625000円 »
The comments to this entry are closed.



Comments
何でしょう、お話の続きが気になります。
やっぱり最後は、背筋がゾクッとするような、お話なんでしょうね。
Posted by: 酎犬八号 | Aug 29, 2005 10:54 PM
こんばんは~、酎犬さん。
>背筋がゾクッとするような、お話なんでしょうね。
それが「目尻にじわっと」な話なんです。
一緒に収められている他の作品もどこか「しみじみ」とした雰囲気でした。オススメの本です。
それからエニアはもうちょっとお待ちくださいm(__;)m。
Posted by: shamon | Aug 30, 2005 08:44 PM