インスパイア作品の鑑
原因不明のまま暴走する新型機械、謎のクラッカーからの挑戦状に地下深く隠された秘密。首都東京の地下で鉄道会社VSクラッカーの戦争が展開される。
「交渉人 真下正義」(以下「真下」)は押井守監督の「パトレイバー」の劇場版2作(以下「パト劇場版」)へのリスペクトたっぷりの作品だ。もっともビルの谷間の夜空へと一羽の鳥が舞い上がるシーンは押井氏の愛弟子の最新作から取ったっぽいけれど(笑)。
「踊る~」シリーズが「パトレイバー」シリーズからインスパイアされた作品であるのを知ったのは雑誌に載った君塚氏のインタビュー。無責任な官僚たち、そのとばっちりをくらい現場で奮闘するのは下っ端、その間を取り持つ一風変わった切れ者中間管理職。人物構成もそのまんま、である^^;。かといってけなしているわけではない。いいとこ取りをしながらも常に自分たちの作品として見事に作り上げるスタッフの手腕は毎度の事ながら素晴らしい。
「真下」は警視庁初の交渉人真下正義への正体不明のクラッカーの挑戦状から始まる。犯人は新型列車を暴走させ携帯を使って警察と鉄道会社を挑発してあざ笑う。真下も含め登場人物たちは皆それぞれの立ち位置でのプロフェッショナル。ぶつかることもあるけれど真下はその交渉能力を生かして味方に取り込み犯人を追い詰めていく。先の見えない展開や息が詰まるような心理戦は「パト劇場版」と同じにクライマックスまで観客を飽きさせない。
押井守作品からインスパイアされた、と聞くと思い浮かぶのは誰でも知ってる某ハリウッドSF超大作三部作。第一作の最初の5分で観る気を失った私に言わせれば、インスパイアどころかただの”殻”だけ真似た映画だ。その点「踊る」シリーズは実に良くできている。この「真下」にしても某監督兄弟におっきなリボンを付けて進呈してやりたいほどの出来である。張り巡らされたキーワードに密室で繰り広げられる人間ドラマはCG技術じゃ描けないんだよ、と書いたカードを付けて。
「パト劇場版」との関連で書いてきたが、実際「踊る」シリーズのファンにはどうでもいいことだろう。むしろ「パト劇場版」を知らないほうが存分に楽しめる。ただ一つ注意するとしたらエンドクレジットが終って場内に明かりが点るまで決して席を立たないで欲しい。最後にちゃんと”おまけ”がついているから。
Comments
「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカス監督が黒澤監督の「七人の侍」にインスパイアされたという有名な話もありますし、映画という業界では珍しい事ではないのかもしれませんね。
最近はやたらとCGを売り物にした映画が多いですが、ストーリーの面白さが伴ってこそCGが生きてくるように思います。(フォレストガンプとか良かったなぁ
「真下」は良くできた映画のようですね。ぜひ見てみたいです。。。レンタルで(おいっ!
おまけが気になる。なんだろな。
Posted by: 酎犬八号 | May 27, 2005 12:03 AM
酎犬八号さま、コメント感謝です。
「スター・ウォーズ」の話は有名ですね。私もそれは読みました。「模倣は創造の始まり」だから、クリエイター同士がお互い影響しあっていい作品を作ってくれれば、と思います。
>ストーリーの面白さが伴ってこそCGが生きてくるように思います。
同感です。”本体”がしっかりしてこそ”スパイス”も生きる(笑)。「戦国自衛隊1549」にもその辺を期待してます。
「真下」は各分野でのプロフェッショナル男たちが素敵です。存在感たっぷりのスジ引き親父の一言が渋い!
おまけは・・・ずるっとこけること請け合い(笑)。でもDVDには入るのかなぁ。劇場公開時に見てこそのおまけって感じなので。
てなわけで劇場で「映画の日」に(笑)ご覧になることをオススメします。
Posted by: shamon | May 27, 2005 12:54 PM