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May 10, 2005

熟成する想い~ANGELS' SHARE~

GW前、あるワインショップから封書が届いた。2年前に予約したボルドーの「2002年物」がそろそろ入荷するのでいつ届けたらいいかという問い合わせだった。早速到着希望日時を書いて返送した。そしてふと思った。ボルドーワインのプリムール(新酒)予約受け付けも近いな、と。

「ずっと黙っていようと思ったんだけど、実はあの時結婚はしなかったの。それでもこっちに来たのは甘えを断ち切ろうと思ったから。これは男除けにつけてるだけよ。」

立ち去ろうとする男の背中へ女は左手の指輪の理由を語った。
「攻殻機動隊S.A.C」(以下「攻殻」)1st17話「未完成ラブロマンスの真相 ANGELS'  SHARE」の1シーン。ハードな展開が多い「攻殻」の中でワインファンドを題材とした異色のエピソード。

子が親に似るように弟子の作品も師のそれに似るのだろうか。神山監督が描き出す男女の関係は師匠である押井守氏の演出に重なるところが多い。師が得意とした何気ないしぐさや言葉で愛しい人への想いを浮き上がらせる手腕を弟子もまたこの17話で発揮している。

「未完成ラブロマンスの真相」は公安九課課長荒巻のラブストーリーである。
荒巻は素子と共に国際会議に出るためロンドンに来ていた。会議終了後”昔馴染み”のシーモアが経営する銀行を訪れた際、そこで密かに進行していたマネーロンダリングがらみの強盗事件に巻き込まれる。が、荒巻はその知力と外部からの素子のサポートで脱出に成功し黒幕を暴いて事件を見事に解決する。先のセリフは全てを終えて立ち去ろうとする荒巻へのシーモアのセリフだ。

このセリフでわかるように”昔馴染み”とは言葉だけ、荒巻とシーモアがかつてお互いに対し特別な感情を持っていたことは明らかだ。ラストで二人は各々の世界に戻っていくが、心の奥底で相手への想いを今までと同じように育てていくのだろう。タクシーに乗り込んだ後、素子に言う荒巻のセリフが秀逸である。

そしてワインファンドが題材とあって数多くのワインが物語を彩る。「攻殻」もワインも大好きな私だがこの組み合わせがあろうとは夢にも思わなかった。ワインセラーの克明な描写、通りのショーウインドーに飾られたロマネ・コンティ。銀行内のコンピュータディスプレイには実在のグラン・ヴァンの名前がずらりと表示される徹底ぷり。荒巻とシーモアの関係を示唆するようなシャンボール・ミュジニー・レザムルーズ(たぶんヴォギュエ?)のご登場には「参りました。」の一言である。
物語はシーモアから荒巻へと贈られる2004年ヴィンテージのシャトー・ラフィット・ロートシルトによって締めくくられる。ラフィットはその長い歴史において数々のVIPに愛されてきたワインでグランヴァンの中では比較的早く飲めはするが長い熟成を経てその本領を発揮する。熟成のピークに達したときに現れる力強さと上品な柔らかさは密やかな大人の恋にぴったりだ。このワインを最後に持ってきたスタッフに敬意を表したい。

5月も中旬になってきた。もう少しすれば2004年ヴィンテージの予約受付が各ワインショップで始まるだろう。

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Comments

実は1stでは、最終回の次に この作品が好きなんです。
番外編なんだろうけど、珍しく大人の淡い恋を上手く演出していましたね。
短編小説にできそうなほどの、素晴らしい出来栄えだったと思いましたよ。
それにしても、ワインの銘柄について詳しいんですねぇ。(自分が知らなさ過ぎるのか・笑

Posted by: 酎犬八号 | May 18, 2005 at 11:35 PM

酎犬八号さま
こちらにもコメントありがとうございます。

私も1stではこの話が2番目に好きです。ちなみに一番は「硝煙弾雨」。

>短編小説にできそうなほどの、素晴らしい出来栄えだったと思いましたよ。
そうですよね。下手なドラマよりよっぽどうまくできてます。
ワインは実写でもよく小道具になりますが、この話での使われ方は実写に負けてませんよぉ。知らなくても楽しめて、知っているとより楽しめる。うまい作りです。

DVDの解説を担当された福富さんがこの話についてコラムをお書きになっています。ご存知かもしれませんがURLを載せておきます。
東京バイツhttp://pcweb.mycom.co.jp/column/bytes/141/
です。

Posted by: shamon | May 19, 2005 at 02:33 PM

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